仕事と晩飯とその他

日記です。

効率の悪いことこそ重要なのかも知れない

木曜の午後に広告代理店から「月曜日の新聞広告出しませんか」と電話をいただきました。無理して何か出そうかと思いましたが、企画の内容が限定されるものだったのでいいのが無く、残念ながら今回は見送り。タイムリーに広告を出すのはなかなか難しいです。

潤沢な広告予算も確実な刊行スケジュールも確保できない出版社にとって広告のタイミングの問題は悩みのタネです。「いつ出すか? 今でしょ!」みたいタイミングで広告を出せることは滅多にありません。特に広告費をかけられない本の場合は……。

そのあたりについて考えると、自社WebサイトやTwitterFacebookなどは「出したいタイミングで出せる(しかも低コストで)」という点が実に中小零細出版社向きです。「それは分かるけど、金かからない分、効果もね……、」というご意見もあると思います(自分もそこは否定しません)。それでも、せめて「そろそろ発売」、「本日発売」、「お店に並んでます」ぐらいは、どうですかね。

書く努力の5倍売る努力をする著者という話題に対して「本末転倒では?」という疑問を感じることもあります。が、著者にとってはその一冊が売れるか売れないかが死活問題だったりすることもあるわけで、ある意味、必死なのは当然ですよね。著者にとってオンリーワンの本が出版社にとってその他大勢になってしまっていないか、そういう点について反省せねばと思うこともあります。

著者の方の「売る努力」はネットやクチコミなどに偏る場合が多いようです。それに対して出版社の「売る努力」はネットやクチコミだけでなく、ITが得意なヒトから見ると効率が悪く思える「書店への働きかけ」という大きな特徴があります。効率の悪いところを地道に押さえていくのは思っている以上に重要です。

とはいえ、気の利いた著者なら5倍の努力などといわず朝飯前でやってのける「ネットでの云々」をやらないのもどんなもんでしょうか。特に書店への働きかけに不安を感じる小零細であればこそ、逆にそこは押さえておくべきではないかと。

「WebサイトやTwitterFacebookは(金はかからないけど)手間がかかる割りに反応が……」ということで放置している社も少なくないと思いますが、前述の通り、せめて、「もうすぐ出ます」、「出ました」、「並んでますよ」、ぐらいはやりませんか(そしてうまくいったら「売れてます」、「増刷します」、「増刷しました」も)。すぐに多大な反応とかそんなことを期待するのではなく、細々とでも「読者」とつながることを意識して。

書店営業が得意な社の方からは「御社、最近、書店営業が足りてないよね」とよく言われます。いちおう、首都圏・関西・中京・九州(最近は中国と北海道も)は営業部の人間が回ってるんですけどね。まあでも確かに昔よりは回る範囲と頻度は縮小しました。読者や書店員のファンがついてどうこうというジャンルではないので、書店営業、本気でやりだすとけっこうとめどないんですよ。だからこそ、最低限のことをなんとかやってるので売り上げが回っているのは常に実感しています(自分でも「足りないかも」という意識は常にありますが)。

先日、某所で「出版のプロの仕事」みたいな話題が出ました。そこでも「気の利いた素人でもできることは沢山あるが、効率の悪いことはできない。著者が直接出版みたいな話もあるけど、だからこそ、ひとりではできない効率の悪いことこそ重要なのかも知れない」みたいな話をエラそうにしたんですが、それはもうほぼ全部自分への反省も含めての話ですね。書店営業に限らず販売促進や広告宣伝というのは効率が悪くて、だからこそ、出版社が成立しているのかなあ、と。これからちょっと違う意味で出版社の役割が見直されるんじゃないかって気がしてるんですよ。編集とか制作だけではない部分が再発見されるような気がします。希望的観測に過ぎないかもしれませんが。