仕事と晩飯とその他

日記です。

連載:出版不況の原因は何か(第13回)

4.書店から消えたロングセラー
 どこの店も同じ品揃えの金太郎飴書店で、というセリフを聞きますが、本当にそうでしょうか。実際はどこの店も売れ筋の商品を確保するのに苦労しており、どちらかと言えばどの店に行ってもキチンと売筋が確保されていないのが現状ではないかと思います。やはり新刊は置かないわけにいかない(例外はありますが)。
 読者に刊行を本当の意味で心待ちされているような新刊の瞬間最大売上は相変わらず猛烈ですし、ネットや店頭を活用した出版社のマーケティングも盛んです。でも、新刊時の勢いのまま長く売れ続ける本はそんなに多くはありません。むしろ勢いのある本の陳腐化のほうが売り時の見極めという意味では悩ましい課題です。次に何を置くべきか。
 毎年増刷を重ねるようないわゆるロングセラーは書店の棚の定番でもありました。刊行点数が爆発する前は定番が棚から弾き出されることはあまりなかった。常備寄託(出版社の在庫を書店の棚に置き、売れた分を補充発注する仕組み。書店が在庫を負担せずに済むなかなかよい仕組みですが、出版社が売れない本でもなんでもかんでも並べるための手段として使い始めてからおかしくなってしまいました)が活用されていた時代の話です。出版社による書店の囲い込みもある意味有効に機能していた。
 刊行点数が増えるに連れて書店の店頭は新刊を置くことに忙しくなっていきます。出版社の営業が場所取りに頑張れば頑張るほど定番の居場所は削られ、ロングセラーは読者だけでなく書店員にも知られなくなってしまった。出版社も新刊を売るのに忙しく、ロングセラーのことを気にかけない社も少なくありません。
 新古書店の登場によって既刊の売行が昔ほど期待できなくなったということもあったかもしれません。とにかく、刊行点数が増大するのと反比例するかのように棚から定番のロングセラーが消えていきました。
 そのロングセラーに再び陽の目を当てたのは間違いなくネットやオンライン書店です。そして、読者は今でもそれらを求めています。書店はPOSデータを5年とか10年といった長いスパンで見直してみてください。そこから見えてきた「長く売れ続けている」本、それこそが、あなたのお店に読者が求めている本ではないでしょうか。

 明日は最後に蛇足で出版不況の話から離れ電子書籍の登場で変わる「蔵書空間」について考えてみたいと思います。
(第14回に続く)