仕事と晩飯とその他

日記です。

モノより体験

モノより体験という話をしていて「出版社もそうかな」と思ったが、自費出版の出版社がまさにそれであった。

出版社が本を作って売るのではなく、出版社から本を出してもらうという体験を売る。

そう考えるとストンと落ちるだけでなく、なぜ、本来の自費出版であるところの「自分で作って自分で売る」ではなく、わざわざ高い金を出してまで自費出版の出版社から出したいというヒトがいるのかも分かる。出版社じゃないと意味がないのだ。「出版社から本を出してもらう」という体験なんだから。

もちろん、そこには「自分で作ってもクォリティが期待できない(出版社で作ってもらえばいいものになるに違いない)」、「自分で売ってもいくばくかにしかならない(出版社に売ってもらえばけっこう売れるに違いない)」という期待が含まれているのは間違いない。

いや、むしろ、そここそが出版社に期待されているところであり、プロとアマの違いであると考えられているのだ。というか、今までずっとそうだった。

なんだ、そういうことか。

体験を売るわけだから、著者がお客様になってそこが満足するようなサービスを提供してというのは必然。ある意味、真の顧客志向。

なるほどなあ。

体験を売るということは、もしかすると商売の根本、誰が客なのかという点を大きく動かすわけでもあるが、それはいいことなのか悪いことなのか。そもそも良い悪いの問題ではなくそういうものなんだろうが。

面白いなあ。そう考えるとまだそっちには可能性あるな。何でかって言うと、既存の自費出版サービスに全てのヒトが満足しているわけではないから。電子で話題の「個人出版」とか、完全にそうだよね。「自費出版に高い金払いたくない」わけ。「電子なら編集も販促も全部個人でできるから」ってこと。で、間違いなくそこにこそ商売のネタは転がってる。既に電子書籍やってるところも徐々にそっち(著者がお客)にシフトしてくだろうけど、そこで初めて不足するものが見えてくるわけか。「全部自分でできると思ったけど……」の先に今の個人出版サービスに足りない部分、つまり既存の出版社がやってることがある。

足りない部分って、結局、ITではすぐに切られる部分かなあ。要は効率の悪い部分。細々とでも広告出し続けたりお店を回り続けたりとか。ボットで繰り返すんじゃなくて人の手を入れるということ。そういえばアマゾンもbk1もレビュー自前でやってた時期あったなあ。ちゃんと読んで感想を書くって大変な作業だ。

で、今度はそこまで考えてから「本屋大賞」の先見の明に打たれる。そうだよな、愚直に「全部読む」こそ、皆が遠回りしたい効率の悪い部分で、だからこそそこがプロに求められていた部分だったわけか。

オレはしょっちゅう「自分は間違っていた」と思うことがある。

今回もそうかな。

でも(駄目な大人のパターンでつい「でも」とか「しかし」とか思ってしまうのだが)、読めないジャンルというものは確かにあるわけで、そこはどうするのか。そこはそもそも違うものなのか。

それ考え出すと切りないからやめよう。

いや、話を戻すと、モノより体験。小売でもそういう方向性アリなのかな。大学生協読書マラソンを思い出すけど、考えてみるとアマゾンのリコメンドなんかもお客さんによる参加型だよね。体験を売るというと大げさだけど、工場見学とか職場体験みたいな何らかの参加型の売り場みたいなものはありうるんじゃないかなあ。決してそれがメインというわけではなく。そういう参加型みたいなものとバシッとプロの売り場みたいなのは充分に並立し得るはず。

参加型って言うとヒト箱古本市か。そういえばガケ書房じゃそういうのやってたな、棚貸し。

オレがああだこうだ考えるまでもなくやってるところはやってるってことか。

いつものことだが、気がつくのが遅いよ、オレ。

(そういえば著者のエージェントっていうのも従来の出版社とは商売のベクトルが違うよね。著者のためにって方向性。良し悪しではなく、やっぱりそっちに商売のネタがあるんだなあ。そう思うと、出版とその周辺にはまだまだ可能性ありそうだ。)

(いや、だから「ITとかじゃなく手の感覚が」じゃなくてさ、効率悪いことに時間かけられるようにパソコンとかデータとかもっと使おうよってことでもあるんだけど、なんかそのあたりはあれか)