売れない本のスモールビジネスっぷりについて知っていただきたい(いや、別に知っていただくほどのことでもないけど)
電子書籍は、出版、中でもイマイチ売れない本の出版がスモールビジネスであるという本質を残酷なほどに炙りだす。
その前に、まずは紙の本で考えてみよう!
例:本体価格3,200円、印税10%、初版1,500部、増刷なし。
→ 3年間で1,500部を売り切った場合
著者への印税支払い=48万円(1年で16万円=月13,333円(端数切り捨て))
「え、そんなに少ないの?」って思った方は普通。
※出版業界で働いているとわかるが、現実には増刷しない本で3年間均等に売れるなどということはない。実際には、初年度1,000、二年目450、3年目50とか、そんな感じになる。ということは、実売印税だとすると、3年目は年間で1万6千円=月1,333円。
「月1,333円とか、マジか……」そう思った方も常識人。「数でカバーするってレベルじゃねえそ、こりゃ」という事実にもすぐに気がつくはずです。
でね、電子書籍は例え同時発売だったとしても紙の本より売れるってことは今のところまだ無いんですよね。あと、紙の本である程度売った本を電子化した場合なんかはもっと減るよね。どういうことかっつうとそもそも売れる数が小さいところへ持ってきて電子はホラ、実売印税じゃん。つまり、上に上げた例の二年目三年目みたいな数字のさらに小さいものになるわけですよ。そりゃあ、「儲からねえ!」って話にもなるよね。
「いや、100万部売れたら儲かるよね」という声が聞こえる。100万部売れたら儲かるとは思いますけど、何年でコストどれぐらいかけてってあたりは気になるはずだよね。例えば1年で100万部だとしましょう。3200円の専門書で1年100万部は現実的じゃないからコミックの値段にするね。400円。印税テンパーで40円✕100万部。4000万。おお、すげえ。映画化とかされたらキャラクターグッズとか派生の権利で儲かりそうじゃん。すげえよ。やっぱ漫画は違うわ。
いや、でも、1年で100万部売れる漫画ってそんなにあったっけか?
もう少し現実的な路線で。1400円のビジネス書。丸2年で10万部。おお、リアリティある。やっぱり最初にがっつり売ったとして一年目が9万5千部。二年目が5千部。話題が次に移ったけど、後数年はほそぼそ増刷できそうじゃん。印税テンパーで1,400万。悪くないよ、悪くない。一年目が1,330万、二年目が70万=月58,333円。あれ? でもまあビジネス書の著者は本業あるからいいか。いいよね、きっと。
ということで最初の例に戻ります。
例:本体価格3,200円、印税10%、初版1,500部、1年後に1,000部増刷。
→ 5年間でなんとか2,500部を売り切った場合
著者への印税支払い=80万円(1年で16万円=月13,333円(端数切り捨て))
月平均は1,500部を三年間で売り切った場合と一緒になる。
「いや、でも、そんなに少ないのは厳しいっしょ」
自分もそう思います。なので、もう一つ例を。
例:本体価格1,600円、印税10%、初版3,000部、1年後に2,000部増刷。
→ 5年間でなんとか5,000部を売り切った場合
著者への印税支払い=80万円(1年で16万円=月13,333円(端数切り捨て))
「おや?」
例:本体価格1,600円、印税10%、初版3,000部、1年後に2,000部、3年後に1,000部増刷。
→ 6年間でなんとか6,000部を売り切った場合
著者への印税支払い=96万円(1年で16万円=月13,333円(端数切り捨て))
「あれ?」
では、もう一丁。
例:本体価格1,600円、印税10%、初版5,000部、1年後に2,000部、3年後に1,000部増刷。
→ 5年間でなんとか8,000部を売り切った場合
著者への印税支払い=128万円(1年で25万6千円=月21,333円(端数切り捨て))
「……」
もう少し乗せて。
例:本体価格1,600円、印税10%、初版6,000部、1年後に3,000部、3年後に1,000部増刷。
→ 5年間でなんとか1万部を売り切った場合
著者への印税支払い=160万円(1年で32万円=月26,666円(端数切り捨て))
もう少しなんとかなんないか。
例:本体価格1,600円、印税10%、初版6,000部、1年後までに5万部、5年後までにトータル10万部。
→ 5年間でトータル10万部
著者への印税支払い=1600万円(1年で320万円=月26万6千円(千円未満切り捨て))
これぐらいだと夢広がるね。やっぱり出版は10万部超えてからだね。
いや、ホント、そう思うわ俺も。
現実はなかなかそういうわけにはいかないけどね。