仕事と晩飯とその他

日記です。

書籍と雑誌の発売日

書籍の発売日は『ハリー・ポッター』のように決まっているものもあればそうでないものもある。それに比べて雑誌は発売日が決まっている(一部地域では遅れる)。早売りはしないというルールも、いちおう、きちんと守られている。

なんで雑誌は発売日が決まっているのに書籍は決まっているのと決まっていないのとがあるのか? 出版業界で働いていないヒトには疑問だろう。いや、出版社で働いていても雑誌と書籍の両方の進行を知らないとわけが分からないかもしれない(書店と取次は分かっていると思いたいが……)。

ということで数回に分けて雑誌と書籍その他の発売日についてつらつらと書くことにした。と言っても雑誌については十数年前の記憶なので細かい点は曖昧なこともあったりなかったり(と、あらかじめ言い訳しておく)。

まずは雑誌(月刊誌・隔月刊誌・増刷・不定期刊(ムック))の発売日から。

雑誌の発売日は取次搬入の中1営業日後と決められている。間に祝日や休日がなければ取次搬入日の翌々日が発売日となる。

より正確に言うと、発売日そのものが決められているので、その中1営業日前に取次に搬入しているのだ。雑誌の予定は全てが発売日を基点として逆算されている。

発売日が祝日・休日や取次の休配日にあたる場合は変更になる。スケジュールの管理にはこのあたりはけっこう曲者。

雑誌(もちろんここで言っている雑誌は取次を通して書店で発売しているもの)は取協の進行委員会というところが同じジャンルの雑誌が同じ発売日になるよう、そのうえで一日の点数がある程度の数(正確な数は覚えていない。このあたり明確な文書などはないはず)を越えないように発売日を調整している。出版社は搬入の三週間ぐらい(あれ? 二週間だったっけ)前までに取次の仕入窓口で過去の実績や企画書(大型の特集や付録)などをもとに仕入担当者と交渉して部数を決める。

窓口での交渉は出版社の雑誌営業(取次担当)の重要な仕事だ。広告媒体としての価値を高めるためには店頭で存在感のある部数は不可欠で、大いに越したことはない。売行が悪く返品率が高い雑誌の部数を広告媒体として価値があるものにするためには返品率の高さを盾に部数減を迫ってくる取次の仕入れ担当者との粘り強い交渉が必要だ。とオレは思っているが、そう思っていない社もあるようで何時間も粘るオレ達の横でまるで書籍の見本進行のようにあっさりと窓口を去っていく社もいたりする。雑誌の(望ましい)部数や(望ましい)返品率について各社同じ基準があるわけではない。

部数を交渉している段階では、当然のことながら、雑誌は出来上がっていない。取次での交渉に使った企画書の内容の一部が変更になることもあったように覚えているが、基本は企画書通りのものを取次搬入日に間に合わせるべく編集・制作の作業が続く。取次に搬入する日が決まっているということは予定は全てそれに基づいて逆算されるということだ。ライターの原稿や広告入稿の締切もほぼ自動的に決まる。遅れを見込んで締切の日程に余裕を持たせることは多い。が、他の作業との兼ね合いもあるのでそんなに余裕があるわけでもない。遅れは原稿の差し替えや編集・制作の徹夜で取り返す、それはあまりにも普通の光景だった。

前の会社で働いている時は電算写植からDTPへの移行期だった。まだ広告も版下で入稿していた。今のようにフルにDTPでデータ入稿という時代ではない。それでもなんとか取次搬入日までに雑誌は出来上がっていた。

出版社の雑誌営業が取次の窓口に提出する企画書には「外回り」と称して雑誌コード・雑誌名・発行元・発売元・発売日・取次搬入日・定価・判型・ページ数・綴じ(平綴じ・中綴じの区別)・重量(結束数)などが明記されている(あれ? 結束数は書いてたかな? 記憶が曖昧だ)。ここで意外と重要なのが重量(結束数)だ。雑誌の取次交渉が書籍より遥かに早い時期に行われる理由の一つに、同一発売日の雑誌を運送用のトラックにどれだけ(何結束)積み込むかを取次がきちんと計画して配送しているという事実がある。トラックには積載量の限界があるので、結束数(一結束に何冊含まれているか、一結束で1Kg10Kgを越えないように5冊単位で決めていく、だったと思う)が違うと重量オーバーになってしまったり、逆に積載量を目一杯活用できなかったりということが発生する。なので、結束違いは「事故扱い」となることがある。

前の会社では一度だけでかい結束違いをやらかしてしまったことがある。15結束の予定が10結束で取次の搬入口に入ってしまった(ん? 逆だったかも)。印刷会社のミスだったのでわざわざ取次の倉庫で結束し直してくれた(オレは下っ端だったのでああだこうだ言う立場にはなかったが、その当時の上司とか編集長とかは鬼のようだった)。

ま、オレはオレでその当時はまだ手書きしていた納品伝票の掛率を全部間違えて(なぜそんなことになったのかは理由もわからない。疲れてたんだろうか)いたことに搬入日になって気がつき、半泣きで全取次に電話して伝票を差し替えてもらったりしたことはある。

事故は他にもあって、よく聞くのは搬入が間に合わないという話。夜になってしまったとか次の日になってしまった(想像するだけで怖い)とか。ペナルティ(取次の時間外作業についての請求)が発生するらしい。幸いなことにそんな目にあったことがないので詳しくは知らない。

それはさておき。

そうして印刷され製本された雑誌は出版社の営業が起票した伝票とともに取次の雑誌搬入口へと納品される。そこで検品後、雑誌のラインに乗せられ全国各地各店舗への便に仕分けられ、トラックに積み込まれる。

書店には発売日の前日もしくは当日の朝に到着する(一部地方ではこの限りではない)。書店は発売日の朝に雑誌の梱包・結束をバラし、付録をセットし棚に並べる。

雑誌の場合はそんな流れになっている。

ということで今回は雑誌の発売日の話。次回(いつになるかわからんが)は書籍の発売日の話の予定。