仕事と晩飯とその他

日記です。

退職に思う

営業部でしっかり仕事をこなしてから編集部に移って制作を担当していたTが退職した。夫の仕事の都合で転勤ということなのでけっこうやむを得ない事情。そう言われてみると旦那さんの転勤で退職って4人連続か。色々と考えさせられる。

営業部では当初は業務システムへの入力や直販の管理と発送などといったアシスト系の仕事がメインだったが、途中からIllustratorIndesignで広告制作もやってもらうようになった。とはいえ、Macもそういうデザイン系のソフトも触ったこともなかったので最初はしっかり教えた。広告制作を始めてそれほど経たないところで広告賞を獲得したのは良い思い出だ。オレよりソフトが使えるようになったところで広告制作は全部お任せにした。オレが作るより全然上手いんで助かった。そのうち編集で作っていた書籍内の自社広告も造るようになった。以前の会社で「部下は自分より仕事できる奴にしろ」と言っていた社長の言葉が身に沁みたなあ。気が付いたらWebの管理も全部お任せで、随分と楽をさせてもらった。

ある時、社内で表紙デザインをという話になって、無理を言って引き受けてもらった。ちょっと前まで素人だったことを考えると随分無理をさせてしまったような気がする。苦労した割りに出来について社内での受けはイマイチだった。けれど、考えてみると「失敗できる」機会を与えられたのは結果的によかったのかもしれない。しばらくして表紙デザインには再挑戦してもらった。その時は社内でも悪くない受けのものが出来上がった。残念ながらそのどちらについても売行きはパっとしなかったが。

社内業務の改善はオレの重要な任務のひとつだ。テクニックとして「業務そのものを見直して不要だと判断したら止める」というのは良く使う。もうひとつ、「手作業で行なっている作業をPCで自動化」というのもよくやる。そういうネタを日々探している。そんなことを繰り返していると、ドンドン事務仕事が減っていく。いや、いちおう以前と同じだけの内容はクリアしつつ、作業を減らしていくわけだが。

発送の簡略化やシステムへの入力項目の削減、伝票等の作成自動化などでTの仕事も随分減った。その代わり、気が付くと編集部の手伝いというか、イラスト作成や本文レイアウトのような作業も増えていた。営業の事務仕事は減ったのにそっちで残業したりするようになったりという状態。若干無理してるのはわかった。

編集で長いこと制作管理的な業務を担当していた社員が定年で退職した後、ヒトの補充をどうするかが話題になった。編集部からTを制作でどうかという話が出た。自分としてはもう数年してから編集に頭を下げて制作を担当させてもらおうと思っていたわけだが、逆に向こうから言われてしまったわけだ。本人には迷いがあったようだが、自分としては出版社で働いている以上は編集制作の仕事に関われたほうがいいに決まっていると説得した。出版社で営業とか事務とかやってますより編集制作の仕事してますのほうが分かりやすいし一般的には格好いいんじゃないだろうか。機会があればやってみて損はない。

制作に移ってしばらくは慣れない事もあって残業も増えたようだ。仲のよい編集者がいて、そういえば彼女の退職の理由も旦那さんの転勤、しかも海外というものだった、二人で今までにない教材を作ろうと意気込んでいた。かなり無理をして作った数冊の本は残念ながらあまり売れなかった。編集の彼女は海外に転居するために退職した。残ったTは残業こそしなくなったが真面目に仕事をしていた。が、旦那さんが転勤ということで引っ越すことになった。

営業部で11年間、編集部で2年間働いて、広告賞受賞、広告制作は多数、表紙デザインは4冊、組版の作業は10冊ぐらい、レイアウトまで全てデザインしたのは確か5点ぐらい、イラストを描いたのも5冊ぐらいだったか。振り返ってみると随分沢山仕事をしてもらった。仕事は出来る人間に集まる。そういう意味では無理をさせてしまったところもある。

営業部でやっていた仕事は事務仕事も広告制作もWeb管理も2年前に全部引き継いでいたので特に問題はないが、今回は編集部に持っていた自社広告が返ってきた。それも消費税の書き換え付きで。けっこう大変だ。

Tが入社する前は7人で、Tが入社してからは6人でやっていた仕事を今は3人でやっている。それ以外の人間が担当していた仕事も引き受けてしまった部分もあり、さらに二人分ぐらいの仕事はこの3人で飲み込んでいる。作業はゴッソリ減らした。ちょっと減らし過ぎて最近は追いついていないこともあったりする。

Tが働いていた期間の前半は会社の業績も好調だった。後半は外部要因でキツい状態が続いている。業務の見直しとコスト削減でなんとかやっている中、震災後の二年間は特に厳しかった。昨年はようやく上を向いた。今年はもう少し上に伸びていく予定。とはいえ、一番良かった時期と比べると厳しいのは間違いない。

再びいい時期を迎えられるまでもう少し長く働いてもらえるとよかったのかもなあとは思う。思うが、こればっかりはしょうがない。

Tの最後の勤務日である火曜、オレはいつものように倉庫に行って直帰だった。倉庫に行く前にご苦労様と伝えた。今日になって聞いたが、就業時間が終わって帰る時に改めて皆にあいさつしたそうだ。泣いていたとのこと。最後に居合わせられなくて残念な気持ちとホッとした気持ちと先を越されてしまったような気持ちと、色んな気持ちがある。

会社勤めなら死ぬまで働き続けられるわけではないから辞める時は必ず来る。定年までじゃなくても円満に辞められるというのは素晴らしいことだ。オレも見習いたい。そのためにも利益をしっかりと確保して会社を存続させていかなければと思う。もちろん、自分のためだけでなく、これからも辞めていく誰かのために。