仕事と晩飯とその他

日記です。

出版社の客は書店じゃねえ(と、あえて強く言ってみる)

うーん、某所で「最後はヒトのつながりですかね」とか言ってるな、オレ。矛盾してる? ヒトのつながりを否定しているわけじゃないんだよね。でも、それだけだとマズいんじゃねえのってことなんだよね。

それはさておき。

昨日も「POS見てどうこうなんて意味ない現物見て営業と話して出版社とつながってなんぼ」みたいな話が出た。お年寄りの意見だよねってことじゃない。この話の中には非常に重要な真実が含まれているからこそ、多分、年齢関係なく真面目に考えれば考えるほどわからなくなる。データ見てるだけで売上は伸びないし現物見せたほうが効果的なものは少なくないし話せば分かることは沢山あるし緊密に連携が取れる状態であれば出来ることは飛躍的に増える。その通りだと思う。

思うが、「本当にそれだけでいいのか」っていうのが昨日のオレの疑問。

そして、それに関して言うと、「昔は取次の店売で現物見て仕入れができた」、「営業も来てくれた」、「本屋だって好き嫌いがある(この感覚はとても好きなのだが)」という流れの中にこそ違和感があるのだ。加えて、「配本並べただけでもある程度何とかなってしまった(今は配本が無いからそういうわけにもいかない)」、「昔は取次がなんでもやってくれ過ぎた(これは出版社についてもその通り)」という反省から導き出される結果にも微妙に違いを感じる。

こんなこと書くとまた怒られそうだが、勢いで書こう。

多分、お客さんからそういう本屋(店売に置いてあるものを持ってきて並べた・気のあう営業の薦める本を並べた・配本のあった商品を並べた)が否定されているんだと思う。

仕入の重要性という話はいくら話しても尽きることは無い。個人だろうがチェーンだろうが、仕入の重要性は今も昔も変わらない。

そして、仕入の前提は、「店売に並んでいる」でも「営業がいい奴だから」でも「入手しやすいから」でもなく「(自分の店の)お客さんが欲しがってるから」なんじゃないかとオレは思う。というか、そうあって欲しい。仕入れの努力がそのための努力であって欲しい。

ああだこうだ書いていて気が付いた。オレが言っていても調達に苦労するようなバカ売れアイテムを抱えていないのであまりリアリティが無いかもしれない。けれど、今、仕入れに熱心な書店は取次にも出版社にも直接当たってるんじゃないだろうか。昔から仕入に熱心なヒトは自分の持ってるチャネルをフルに活用しようとしていた。ヒトのつながりはいくつもあるチャネルの拡大のひとつであってそれが全てじゃない。少なくともオレの知ってる真面目な書店人はそうだった。待つんじゃなくて直接働きかける(ウチはそうやって猛烈アプローチされるようなアイテムが無くて本当に淋しいなあ)。

「営業に来ないと置けないよ」というのは実は地方に行くとけっこう聞いた。挨拶代わりみたいなもんだと思っていたが、もしかしたら本当にそう思っているお店もあったのかもしれない。もし本当にそう思っているとしたら、それは何か大きな勘違いをしているのではないかと思う。

本屋のお客さんも出版社のお客さんも実は同じだ。読者だ。本屋は出版社の客ではない。大事な商売仲間ではあるが、客ではない。買切商品であったとしてもだ。出版社の中にそれがわかっていない人がたまにいるような気はしているが、もしかしたら書店にもいるのかもしれない。いや、いたかな。昔の○○会とか行くとそういうヒトいたな。「置いてやってる」「仕入れてやってる」みたいなヒト(でも嫌いじゃないんだよなあ、そういう殿様商売も。それはそれでありだと思う)。

POSの定義がどうこうは検索すりゃ出てくるのでどうでもいいのだが、書店におけるPOSが何を表しているのかについては改めて主張したい。POSは無味乾燥なデータではない。その先に「お客さん」が見えてこなければ使う意味は無い。よく「スリップじゃないと」という方がいるが、スリップだろうがPOSだろうがそんなことは瑣末な問題で、要は売上という事実の向こうにお客さんが見えるか否かが重要なのだ。

お客さんの望むものを仕入れるために店売や出版社との人間関係は不可欠なのか?

うーん、どうだろう、確かにないよりあったほうがいいと思う。あれば出来ることは増える。けれど、無くたってなんとかなることもあるんじゃないだろうか。

少なくとも、「昔は店売や営業とのつながりがあって豊富な商品を仕入れられた」とは、お客さんは思っていないんじゃないかとオレは思う。金太郎飴書店がどうこうではない、お客さんは選びたいのだ。

もちろん、店舗という物理的な限界の中で全てを揃えられるわけではない。セレクションやリコメンドという、ある意味オンライン書店がデータベースやUGC(User Generated Content:ユーザーが自ら書き込むテキストなどで構築されるコンテンツ)で自動化しようとしている機能のほとんどを書店員が全て担うのは無理があるんじゃないだろうか。とはいえ、個人のセレクションやリコメンドはお客さんと波長が合えば有効だ。特に、「アイテムの絞込み」が「お客さんの絞込み」であることを明確に意識している場合には。山奥の本当に美味しいレストランに行列ができるみたいな「職人の技を誰もが認め立地や値段を超えて評価される」みたいな話は皆大好きだし、それはそれでいい話だと思う。それを目指すヒトがいてもいい。でも、それだけじゃないってことはみんな分かってるはずじゃないかと思う。

考えながら打ってるのでまとまらないが、ここへ来て急に「マーケティング」という言葉が浮かぶ。市場の声を聞き、それを商品制作・流通に反映させること。うーん、やっぱりそっちなのかなあ。

「作りたいもん作ったからついてこれる奴だけついてこい」って言うのと「みんなの意見を聞いて作ったからみんな来て来て」っていうのは対極にあるようで実は意外とそうでもないのかもしれない。

さっぱりまとまらんな。