仕事と晩飯とその他

日記です。

ネットで話題の契約書の話その3

(承前)

著者との関係性を編集・著者からざっくりと営業的な部分にまで広げていった出版社がないわけではない。従来の出版社の営業方針に不信を抱き不満を抱えていた著者にとっては「理想の出版社」に見えるのかもしれない。確かに何やってるのか説明もなく自分が意見を言っても反映されているのかどうかも分からない会社に比べると打てば響くような感じがする出版社は「お任せできない」と思っていた著者にとっては「理想の出版社」なのだろう。

それもありかなと思う。少なくとももうちょっと正直に販売の現状などを話せる関係が構築できるなら営業もちょっとは気が楽になれるかもしれない。著者とだけじゃなく編集ともなんだけど。

ただ、それが本当に目指すべき形なのかどうか、自分にはわからない。というより、もっと正直に言うと、それはあくまで「川上の発想」なのではないかと自分には思えてしまうことがあるのだ。もう少し言うと、あくまで、もしかしたら、でしかないが、「自分は書くことに専念したいから商売のことはお任せします」という著者と付き合うこと自体が正解なのではないかという気もするのだ。なんというか「作品」そのものとしか向かい合えないようなそんな才能と仕事をすること、それ自体が、あるべき姿なのではないか、そんな青臭いことを本当に考えてしまうのだ。そして、そんな、ある意味書くことによってしか報われない才能を見出すことこそが出版社の役割なんじゃないかと思ったりもしてしまうのだ。いや、文芸だけに限った話ではない。名刺代わりじゃない本を出すということ、そしてそれを真面目に売るということ。

自分はそんなことを考えさせられました。