仕事と晩飯とその他

日記です。

ネットで話題の契約書の話その2

(承前)

確かに、出版契約は大雑把なところがある。どこの店に置くかとか販促にどの程度の費用と手間をかけるかとか、そういったことは書かれていない。いや、あくまで出版契約であって販売促進業務について定めているものではないからと言われると思うし自分もそう思ってはいるけど、契約に明記せずとも販売促進や配本のことについて何も説明がないのは不親切かもしれない。あまり細かく決めることはないが、いつまで販売を続けるのか=重版(増刷)しないという決断の条件は何か、といった点には、もうちょっと配慮があってもいいような気もしている。

出版社の社員にとっては仕事の中で処理する一点の商品であっても著者によっては一生に一冊の大事な本かも知れない。そこまで大げさな話ではなくとも「作品をないがしろにされている」といった気持ちを抱かれてしまってはお互いにいい関係性は保てない。

絶版(もしくは長期品切)にしたり不良在庫化した商品を断裁する際にきちんと著者に説明している出版社はどのぐらいあるのだろう。

契約に品切・絶版の条件を明記したとしても、ちゃんとした説明の上で進めていくというのであれば、実際に品切や絶版にする前に「このままだと絶版(長期品切)にせざるを得ません」という相談も必要になるだろう。著者によっては「お前らの販売努力が足らんからそういうことになるんだ」と怒るヒトもいるかもしれない。そうなれば、それまでの販売努力についても説明しなければならない。中には「いやあ、もう充分売ってもらったから、残念だけど、この本の寿命ということで、今後は別の本の販売にご尽力ください」とか言ってくれる仏のような著者もいるかも知れない。というか、いたらいいな。

で、よく考えると出版社内の編集と営業とでもきちんとこういう話をしてるのだろうか。どうだろう、少なくともウチではあまりしない。ウチの編集者は著者に絶版や品切の理由をちゃんと説明できないと思う。それでも説明するなら営業が話すしかない。

オレはそれでもかまわないし、これから先のこと考えるとそうしていったほうがいいような気もする。でも、多くの編集者は営業が売上や販促のことで著者と直接話すのを嫌がるんじゃないだろうか。

(もうちょい続く)