仕事と晩飯とその他

日記です。

元気な出版社や本があっても全体は苦しい その2

 店頭で「元気な」出版社や書籍があるということはその影で割を食っている出版社や書籍もあるということ。一点が集中的に積まれている裏で棚でゆっくりと回転するような本の居場所がなくなっている。平積するほど数が出るわけではないが書評などで問い合わせを受ける可能性が多い人文書なども。
 個性的な書店も、店頭の商品を常に取替え目先の新しさを演出するようなやり方だと返品はどうしても増える。
 返せばいいじゃん、と気軽に言う人はまだ少なくないが、書店が売上にならない商品(返品)に手間や時間をかけられない状態になってしまった以上、発注を絞ってでも返品を減らしたいと思うのは必然だろう。
 取次にしても返品物流に金をかけるようなバカらしいことはあまりしたくないはず。返品に関する状況が改善された時に投資が無駄になる。
 店頭をプロモーションの場として派手に使う「マーケティング」では、ある程度の返品は必要悪と理解したうえで許容せざるを得ない。具体的な社名が浮かぶ方も少なくないと思うが、そのやり方の先には膨大な市中在庫自転車操業の果ての大量返品が待っている。
 自分も営業なのでこんなことを考えるのは矛盾だが、営業が頑張りすぎて市中在庫が無分別に膨らむのが一番怖い。
 市中在庫の問題は、返品だけでなく増刷や商品調達など多くの問題と関連している。実売だけでなく市中在庫が見えるようになりつつあるが、それによって増刷のタイミングは改善されつつある。
 が、増刷と商品調達の問題がさらに改善されるためには市中在庫がわかるだけでは駄目で返品物流の高速化が望まれる。以前に比べると大幅に改善されたが、それでも書店が返してから出版社の倉庫に届くまでに2週間程度かかっている。
 営業が足しげく通ってることで返品を防ぐ(「あのヒトの会社の本だから返せないな」とか)のは営業のやり方としては満点に近い気がするが、お店の売上や在庫のことを考えると本当にそれでいいのかという気がしてならない。
 特に書店の現場担当者がどんどん若くなっている今、真面目で熱心な営業担当者から「これ、平積で並べましょう」とか「今度の新刊、多面で展開してみませんか」とか言われてそれを断るのも気が重いのではないか。