仕事と晩飯とその他

日記です。

元気な出版社や本があっても全体は苦しい その1

 弊社はずっと既刊の売上のほうが高いのですが、ここ数年は既刊の売上が落ちたせいで新刊の比率が4割ぐらいまで上がってしまい、利益の点からいくとやや苦しくなってきました。規模が小さくて単一ジャンルの出版社なので一般的ではありませんが。
 既刊の売上が落ち込んできた理由は、衰えない新刊刊行ペースの影響もあるようです。新刊の波に押し流され市場から消え失せてしまう本。常備などの縮小によってその流れが加速しています。
 一部の「元気な」出版社や書籍があっても全体が落ち込んでいるのはなぜか? 書店店頭が売り込みたい意欲の旺盛な出版社による大量陳列の場と化している現状。大量返品とは言っても改装すればまた市場に投入できるわけで、広告宣伝に比べれば安いものだと考える出版社はある。
 本屋の店頭は本来オンライン書店以上に「ロングテール」の場であった。大量陳列大量返品の商品が店頭を占拠すればするほど細く長く売れていた本の場所が無くなる。
 一方、「大量仕入れの商品は返品率が低い」「そんなに大量の配本は無い(というお店がある)」のも事実。店頭をプロモーションの場と捉えれば大量に置ける店を選んでそこに集中するのは常道。100冊入れて20冊返品と1冊入れて一冊返品、返品率で比較しても意味が無い。
 取引条件の内払い(条件払いとも、新刊委託の翌月支払い分)が出版社の自転車操業の原因として槍玉に挙げられることがあるけれども、実際には内払いのない新規の出版社でも新刊の点数でなんとか回しているところは少なくない。
 注文分の100パーセント6ヶ月保留などというかなり過酷な条件を強いられている出版社もあるが、支払いが6ヵ月後であることが自転車操業をしないことの理由にはならない。むしろ、6ヶ月後の入金のために目の前の売上に汲々としているのが現実。
 大量陳列大量返品については、なにも新刊に限った話ではない。書店が主導する場合も出版社の営業が主導する場合もあるが、既刊を中心とした平台での「フェア」企画などでも驚くほどの返品が発生することがある。