仕事と晩飯とその他

日記です。

連載:出版不況の原因は何か(第14回)

 本を買って読むというのはけっこう贅沢なことだと思います。お金や時間の問題もそうですが、買った本の置き場所を確保するためにはある程度の空間が必要です。家に書斎がある方はかなり余裕がある方でしょう。そういう方ほど本を沢山買う傾向があるようで、本好きの皆さんによる「本棚に入りきらなくて床に積んであるんだけど」とか「数えたら何千冊もあって」といった話は昔から定番です。
 本を収集することが大好きだという方もいらっしゃいますが「読むのが好き」な方の中には読み終えた本の置き場所に困っている方も少なくありません。
 本を所有するということにこだわらなければ捨てるとか新古書店に売るという方法もあります。図書館で借りるというのも現実的な選択です。図書館を自分の本棚代わりにしてしまえばいいわけです。書店で買うのも書店の棚を有料で自分の本棚として利用していると考えられるかもしれません。
 自分の家の本棚に本を置いておくことにはお金がかかっています。それこそ本を納めるために離れを作ってしまったりという話を聞くと、そのコストが実感できます。
 本の置き場所を仮に「蔵書空間」と呼びます。「蔵書空間」の利用には色々な制限があります。家の本棚という「蔵書空間」は利用は自由ですが収蔵できる冊数に限りがあり、限度を超えるとコストが跳ね上がります。図書館という蔵書空間は無料で利用できますがアクセスと利用時間にやや難があります。CVSという蔵書空間は立ち読みなら無料で利用できますがアイテムがあまりに少ない。新古書店は、書店は、オンライン書店は……。
 電子書籍はどうでしょう。電子書籍を単に電子データとしてメディアやデバイスに封じ込めてしまうのではなく、電子書籍そのもののアーカイブをネット上の巨大な「蔵書空間」と理解し直してみると、従来の「蔵書空間」との違いが明らかになってくるのではないでしょうか。そこには大きな可能性を感じますが、その可能性と切り結んでいくのが今までの出版社や取次・書店である必然性は、個人的には、あまり感じていません。

というわけで、以上、出版不況(と、蛇足で「蔵書空間」から考える電子書籍の利便性)に関する私見でした。繰り返しになりますが、あくまで私見です。数字的な検証は行っていません。長々とお付き合いいただきありがとうございました。
(以上)