仕事と晩飯とその他

日記です。

連載:出版不況の原因は何か(第8回)

 本日は「本との出会い方の多様化」について、図書館とオンライン書店の影響を考えてみます。

3.図書館で借りる
 図書館が貸出率の向上に真剣に取り組んできた効果でしょうか、本は図書館で借りて済ますという方はけっこういらっしゃいます。
 書店売りではなく全国の図書館への納入を前提とした少部数の出版物を扱う出版社は昔から存在しています。そうした出版社は図書館営業に特化してきたわけで、図書館の動向が業績に直結しているようです。図書館の数は増えたのに全体の予算が削減されてキツイという話を伺います。もちろんそれは事実だろうとは思いますが、図書館が一般的な書籍も収集の対象としていることによって競合が発生しているという問題もありそうです。供給過剰の影響はここにも及んでいます。
 図書館だけを対象としていない一般的な出版社では、貸し出しによる売上の減少といった直接的な影響は考えているほど大きくはないのかもしれません。が、「無料で借りられる」「(今読まなくてもいつか)借りられる」という選択肢がより一般的になったという意味では間違いなく影響を受けています。

4.オンライン書店で買う
 オンライン書店は大型書店の売りであった「品揃え」が全く通用しなくなる強敵です。物理的な限界のあるリアル書店がどうしてもできない品揃えの限界を超えたのはWeb上の商品データベースでした。時間や場所の制約を超えたのも大きい。いつでもどこでもどんな本でも(もちろんそこには別の限界がありますが)。購入履歴による関連書籍のおすすめや読者からの感想などの影響も小さくありません(そのあたりの影響は次の「本の選び方の変化」で)。
 しかも、アマゾンが売上のランクを公開したことで著者からの注目も一気に高まりました。出版社にとって著者の意向は無視できません。ということで出版社もアマゾン対策を考え、結果的にいわゆるバズ・マーケティング(クチコミ・マーケティング)の実験場みたいな感じになってしまいました。
 売れ筋への傾斜はリアル書店でもネット書店でも顕著ですが、そこに違いも生まれています。ネットの変化は早く、ほとんどの出版社はその流れにうまく乗れていません。

 明日は「本との出会い方の多様化」の影響についてまとめです。
(第9回に続く)