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日記です。

連載:出版不況の原因は何か(第9回)

 本日は「本との出会い方の多様化」の影響についてまとめです。

 「本との出会い方の多様化」にはいい面も多々あります。ですが、定価で買わなくても本は買えるという事実の発見や増えるチャネルに対応した商品開発、さらには「いつか買えばいいや」が結局押し流されてしまう危険性といった問題も生み出しています。
 従来の書店売りを前提とした販売促進が新しいチャネルに対応できていないといった問題もあるかもしれません。例えば不良在庫の処分に新古書店を使うということは今までもある程度行われていますが、出版社が新古書店と直接取引きするような流れはまだあまり一般的であるとは言えません。今後はそうした可能性も考えられるはずです。e託の登場によってだいぶ変わりましたが、オンライン書店に在庫を置いてもらうためにはどうしたらよいかという話題も中小零細出版社の間で繰り返されています。
  書店は「いつでもどこでも本を手に入れたい」というニーズに応えるべく郊外型や大型化・専門店化・長時間営業など様々な変革を行ってきました。が、「安く手に入れたい」にはどうしても応えることができなかった。新古書店の急増は「安く」のニーズに応えるものであったと同時に他店舗化すること「安く買いたい」というニーズを掘り起こすことに成功しました。
 読者のニーズに終わりはありません。「いつでもどこでもどんな本でも手に入れたい」という要望に応えるオンライン書店の登場によって物理的な限界のあるリアルの書店という意味を改めて考える必要が生まれてきました。リアル書店はどんなニーズに応えるべきか。どんなニーズを掘り起こすべきか。
 これから先は「いつでもどこでもどの時代のどんな本でも無料か無料に近い値段で確実に手に入る」電子書籍と競合する時代になります。読者との関係を見直すのは書店や取次だけの課題ではありません。出版に関わる全ての人間に影響は及びます。

 明日は「本の選び方の変化」による売上の変化を考えてみます。
(第10回に続く)