仕事と晩飯とその他

日記です。

書店で置き場所が分からない本 補足

■なぜ、読者対象の明確化が必要なのか。
書店で置き場所がわかる本は、その場所を中心として棚に収まることによってより長く売ってもらえる可能性が高くなるから。結局売れなければどこにあっても返品されるのだが、置くべき棚がはっきりしていると「とりあえず一冊はこの棚に入れとくか」となる可能性が高い。棚ではなく出版社を強調する方法論もある。ただ、それも「このジャンルであればこの出版社の本は揃えておかねば」という状況を作り出すことが前提。長く出版を続けるこつとして多くの先人が「得意ジャンルを作ること」を挙げているのはそういう意味だ。書店に長く売ってもらうための方法論として「出版社としての得意ジャンル」を確保する。これはとても有効なのだ。もちろんそういう下準備のうえではじめて常備寄託が生きてくる。
 ※ただし、常備については死に筋の大量保有や早期返品、付随する物流コスト及び(必ず返ってくることがわかっている)常備のための増刷等々問題が多く、近年は取り組む社は減っている(弊社もその一つ、というか今年で常備は全てやめる)。代わりに重要になっているのが「自動発注」。自動発注を理解するためには「書店で長く売るための方法論の変遷」を理解する必要がある。パソコンやインターネットの問題ではない。

■全体を見ることは部分を軽視することにならないのか?
個店の売上に一喜一憂するな、というのは数字のレトリックに惑わされるな、という意味。全体の売上は個店の売上の積み重ねであり、それは「データを取得できていないお店(出版社が売上を把握できていないお店)の売上も含んでいる」ことを理解せよ、ということ。データは重要だが全てではない。「データ重視」は「データのあがってくるお店しか見ない」こととは全く違う。自戒も含めてだが、ヒトは見えるところに着目しがちだが見えないところがあることを知っていなければいけない。
 ※個店の売上は重要であり、「全く売れないお店(売上0冊の店)を減らすこと」は直接的な売上増につながる。そのために個店毎の実売・納品・返品のデータが必要だし、店舗の情報も重要なのだ。
 ※拡大を図らずに店舗の範囲を限定する、という戦略は納返品を把握できる「書店との直取引版元」には特に有効。直取引だから扱い店舗が少ない、ではなく、扱い店舗が少なくても良いから直取引、という、より積極的な意味合い。