仕事と晩飯とその他

日記です。

オレも2017年の出版動向を適当に予測してみる

去年はやってないな。

ざっくりと適当に。ああ、どっちかって言うと細かい話です。それと、予測というよりは自分が注目しているところって感じかなあ。

1.ロングセラーの復権と書店の品揃えの変化
ここ数年(よりもう少し長いスパン)で見ると、オンライン書店でもリアル書店でも足の早い新刊が重要視されてきた。その流れが少しだけ変わりそうという話。実は、書店店頭の品揃えにおけるロングセラーの復権という流れは既に傾向として出始めている。チェーンでも個人でもどこまでそれを意識的にやっているか、それは書店ではなく出版社でも同様。雑誌が売れない時代=新刊が売れない時代とまでは言えないが、「読者は何を求めているのか」を考えた結果としての既刊・ロングセラーという流れ。実用や専門だけでなく娯楽に於いても可能性は高い。

2.メディアとしての信頼性とオリジナリティの問題
キュレーションメディア問題は鎮火の方向性のようだが、まだ火種としてくすぶっている。出版業界に飛び火する可能性は現状ではほとんどなくなった。とはいえ、ちょっとしたことで再び引火する可能性は高い。その際、著者名があったとしても実質的にまとめサイトと大差ないような「キュレーション本」がどうなるか。短期的には何も起こらないかもしれないが、ここで意識を変える必要性はあると自分は考えている。

3.巻き込む売り方と信者ビジネス
「多くを巻き込めば多くが売れる」、そういえば昔「雑誌の企画で企業インタビュー増やしましょうよ、そしたらその企業に勤めてる方や家族だけでなく関連の会社のヒトも買ってくれるんじゃないすかね」などと脳天気な提案をして却下されたことがある。発想としては同じだと思うが、オレには実行力が足りなかった……。ということではなく、巻き込み型は考え方としては以前から有るわけで、そこに何らかの新しさ、クラウドファンディングSNSなどを盛り込んだということなのだと思う。で、こういうのは「信者ビジネス」に行き着く可能性がある。新たなカリスマが誕生しているが、これが従来のカリスマとどう関係性を結んでいくのか、それとも無関係に並立するのか、衝突するのか。このあたりが見どころになる。

4.電子書籍のフォーマット問題
EPUBで決まりって感じだったのが揺らぐ可能性があると思うんですね。理由はPDFでの販売の普及です。読み放題も含めて。PDFは「重い」とか「(作り方によっては)検索できない」「(作り方によっては)引用できない」とか言われてるけど、どうだろうなあ、重さはともかく、検索とか引用とか、読み放題の読者ってそういうの求めてるのかなあ。PDF販売については昨年大手がどかっと始めてるっていうのもある。Aが嫌がってるけど別のところがやると思う。出版社も楽なんだよね。以前から指摘されている通り、日本の出版物ってレイアウトの要素が多過ぎてリフロー型にしにくいんですよ。PDFは簡単だからね。さて、どうなるか。

5.学術系出版物の電子化への移行
エルゼビアの問題など含めて学術系は具体的な電子化の話が活発なんだけど、これもオープンっていう流れの中で変化が訪れるんじゃなかろうか。今年かどうかは微妙だけど。というか、知の共有が紙だけで為されるという時代は終わるんだろうなあ。このあたり、娯楽や実用とまた違う世界。プリントオンデマンドが絡んでくると「電子で保持して必要な時に紙で出力」も現実的な話になる。PODのコストがもう少し。

6.書誌情報や雑誌情報のオープン化とその利用
うん、進むよ。間違いなく進む。書誌情報って電子化・オープン化と相性はすごくいいんだけど、今までも色んなプレイヤーが色んな形で利用を進めている利害関係も含めて「既得権」のようなものが成立している。けど、壊れるだろうなあ。で、そうなると後述するけど、色んな所に影響が出てくるはず。

7.書店・出版・図書館システムの変化
現状はバラバラなんだよね。書店・出版社は本来もう少し近くないとおかしいんだけど、バラバラ。両方のシステムを開発している会社もあるけど、思ったより近くない。図書館は別世界。異次元。なんだけど、「書誌情報」が統一化されると共通点が増えてくる。その過程で標準化や統合の方向性が見えてくる。今年すぐに変わるとは思わないけど、「書誌情報の標準化」はそういう流れを生み出す可能性が高い。既に書協と図書館の大きめな話がある。あとは「分類」と「雑誌(定期刊行物)」。ThemaとかISSNとか、そういう流れに乗るのか乗らないのか含めてここ数年のうちに何かありそう。

8.(小説&漫画)投稿サイトの変化
「個人作家」(という表現そのものがやや不思議ではあるけど)と「投稿サイト」(と、その背景としての出版社)の関係性は複雑なようで単純だ。投稿サイトによる新人の発見(育成とは言わない)という流れは変わらないだろう。流れに乗らないことを選択する事自体は自由だ。同人誌とかも別に今始まった話ではない。けれど、投稿サイトが「登竜門」的な位置づけを強めていけば強めていくほど、それは旧来の出版の流れと変わらないということになる。そのあたり、どうなんだろうか。

あと2つと思ったけど時間が……。

それはともかく、出版の話に限ったことではないんだけど、昔もやってたとか昔からやってたとかいう云々がちょっと横文字の名前つけられたりITと絡んだりしただけで「新しい」みたいな話になっちゃうのってなんなんだろうね。自費出版も同人誌も直取引も直販も昔からあったよ。割賦販売とか通信販売も。そうそう信者ビジネスとかも。福永法源とか懐かしい。で、「今だからこそ」みたいなところに着目するならともかくそういうの抜きで新しいとか旧弊をぶち壊すみたいな話になっちゃうのってどうなのかなあ。そもそも新しさを強調するために古いものを仮想敵みたいに仕立て上げる必要はあんのだろうか。無いよなあ。本当に新しければ「新しいですよ」だけでいいと思うんだよ。まあ、こんなことを言い出すってことはオレが爺になったってことなんだけどね。