『チベット旅行記』、心の底から面白かったです
書名だけは聞いたことがある有名な本、そんな本のひとつが河口慧海の『チベット旅行記』だ。
ようやく読んでみた。
面白かったぁー。いやあ、もう手放しで心の底から面白かった。全然予備知識無かったのも良かったのかもなあ。もっとかたい本だとばっかり思い込んでいた。
全編通じて淡々とした語り口でありながら一文一文にそれぞれ味があるです。愉快、そして痛快。
前半の苦難の旅、雪山で死にそうになったら座禅組んだり冷たい川でおぼれそうになったらあっさり死を覚悟したりそんな中でも折に触れて歌を詠んだり。雪豹より怖い美人の奥さんを持つラマのことを思って涙が出たり、とか。
ようやくたどりついたラサで、日本人であることを隠しながらもいつの間にやらセライ・アムチー(セラ寺のお医者さん)と呼ばれる有名人になってしまったり。
後半、日本人であることが発覚しそうになって決死の脱出行、そこでも手に汗握る展開が。
これがノンフィクションだからなあ。こういう面白い本にまだまだ出会えていない自分が恥ずかしい。
通勤電車の中で読んでたからさっぱり進まなかったけど、それでも読み終わってしまうもんだ。
終盤、後に残した人たちをなんとか救おうとネパールの大王に謁見するシーンで自分には『ブラザー・サン シスター・ムーン』の聖フランチェスコがローマ法王に謁見する場面がなぜか浮かんできた。
読み終えてしまうのが惜しくて惜しくてたまらなかった。いっそ中断してしまおうかなどと考えた。でも、朝の通勤電車で最後まで読み終えて、なんだかすごくさわやかな気持ちになったです。世界が明るく見えるような。ありきたりだけど、オレも頑張ろう、みたいな。そして『ブラザー・サン シスター・ムーン』のドノヴァンの歌声が聞こえてくるような。
本当に面白い本はすぐに再読したくなる。帰りの通勤電車で最初から読み始めました。
ああ、出だしを少し読んだだけでラストシーンに全てがつながる。そういうことだったのか。
まあ、でも、若くて行動力のあるヒトは読まないほうがいいかも。そういうヒトはチベットに行きたくなっちゃうと思うので。止めないけど。
明日からまたしばらくこんなに面白い本が読めると思うと楽しみだ。