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日記です。

電子書籍は出版業界の救世主にはならない、その2

返品の話が分かりにくかったようなので別の表現を。

要は、「紙の本でも供給過剰なのに電子だとその状態はさらに加速されるんじゃないですか」ってこと。「出したいと思う本が出しやすくなる状況と読みたいと思う本が潤沢にある状況とはまったく別物だ」ということでもあります。

電子書籍の最大のメリットは、売れるか売れないかの話は置いて、「出したい本が出しやすくなる」ということだと思います。

※出版社では採算性は企画を考える際に非常に重要な要素なので、売れないような気がする本は出しにくいという現状はあります。それもちょっと別の話。

実は紙の本でも昔に比べて出したい本は出しやすくなってます。DTPだけでなく印刷業界の努力もあって製造に関するコストが随分下がったからです。

読むほうからしても点数が増えると読みたい本は増えてくるから悪くはないはず。ですが、「点数が増え過ぎて読みたい本を見つけられない」もしくは「すぐに品切とかになってしまうので読みたい本が手に入れられなくなってしまう」といった問題はあります。点数が増えたことによるデメリットというものもある。

紙の本では現状の4割程度の返品というのは刊行点数が増え過ぎてしまったせいもあります。需要と供給のバランスですね。

で、電子だろうが紙だろうが供給が過剰になってもねってことです。というか紙の本なら供給過剰は返品という具体的な数字で跳ね返ってくるから是正も可能だけど電子だとそれはできないですよね。

自分も長い目で見れば電子書籍に移行する部分は少なくないと思ってます。けれど、供給過剰の問題は電子化ではまったく解決できません。

自分が「電子書籍は出版業界の救世主にはならない」と思う理由はそこに尽きます。

逆に、あくまで紙の本に限られますが、返品運賃の値上げは一時的な苦境を生み出しても最終的に需給バランスの健全化には役立つのではないでしょうか。原油の値上がりによって流通コストの増加が考える今だからこそ、思い切った対応も有り得ます。もちろんそれを機に電子に走る出版社もあるとは思いますが、それはそれである種の棲み分けでもあり、悪いことでもないようです。

などと考えております。