お薦めしたくない本。
自分にはメジャーなところで紹介されると悔しい気がする本っていうのがある。セリーヌとか金子光晴とか。もう誰も読んでくれるなってたまに思ってしまう。勧めたくない本、実はけっこうある。
自分の周りでセリーヌが流行ったのって大学生の時か。なぜか高校の同窓の連中の間で流行ったんだな。俺は中公文庫の『夜の果ての旅』(上・下)しか読まなかったけど、国書刊行会の全集買い込んでたヤツもいた。読んだのかな、あれ。
セリーヌについてはその前から名前だけは知っていた。カート・ヴォネガットがセリーヌを擁護する文章を読んだから。そのフランス風の名前の作家と友達の間で話題になっていた呪われた作家の本とが結びつかなかった。
『夜の果ての旅』(今は『夜の果てへの旅』となってるようだが、手元にある1989年の6版では『夜の果ての旅』となっている)、いきなりガンとやられた。が、そこから先が、どうにも読み進めるのが苦痛な話なのだ。いちいち全てがのしかかってくる。何もかもが重い。何とか最後まで読んだ。もう一度読めるかどうか、そんなことを思った。
他人には勧めにくい本だと思う。というか勧めたこと無いな。
新聞の書評で『夜の果てへの旅』が取り上げられるそうだ。読む人が増えるのだろう。読んで、まあ、色んな感想を抱くだろう。
でも、万が一の話だが、セリーヌの言葉を前後の文脈も何もおかまいなしにぶつ切りにした名言集みたいな本を出す出版社とかあったら俺は呪う。心の底から呪う。というか、その前に震える、怒りで。でも結局、笑う。空っぽだ。そこには何もありはしない。
冒涜という言葉を聴いたことがあれば意味を考えてみたらいい。
それだけを願う。