腹立つ気持ちはよくわかったうえであえて
町の本屋に「アマゾンが」とか言うと腹が立つのはよくわかる。地味な書籍しか出していない中小零細の出版社が「講談社が小学館が集英社がコミックが雑誌が」の話をされるのより不快感は大きいだろうと思う。
それはよくわかったうえで、それでも、以前から言っている通り、町の本屋はアマゾンをチェックすべきだと思う。刊行予定に関して言うと、週報や速報だと見逃す恐れがある話題書もアマゾンではチェックできる可能性が高い。新刊についても配本のない話題書は存在しているわけで、そのチェックだけでも意味がある。
それから「話題のキーワード」と特定のジャンルでの売れ行き良好書も、仕入れるかどうかは別として、チェックしておくべきだと思う。アマゾンが一番いいとは思わないが、それでも他に比べると「顧客のニーズ」に近いものが表されているはずだ。(文教堂の売れ行きランクも体感としての世の中の売れ筋に近いところが拾われていてけっこういいと思う)
もう何年前だろう、書店の集まりでインターネットやPOSデータの活用について書店の経営にどう生かすか話をしろと言われて何話したらいいか手探りで話した時にも「アマゾンの売れ行きランクや『この本を買った人はこの本も買っています』といった情報はマーケティングのためのデータとして考えるととんでもない値段がついていてもおかしくないもの。それが無料で公開されているわけで使わない手は無い」という話をした。反応は、正直あまり芳しいものではなかった。
が、やはり今、特に小さい書店はアマゾンの近刊予約情報や新刊情報、売れ行きランクを活用すべきだと思う。新刊洪水の中でも確実に「待望されている商品」はある。ワンピースやのだめを確保する以外にも押さえておいて損の無い商品はある。
ウチの会社の本が該当するかどうかは別として、書店が仕入れるための前提となるデータは重要だ。今の広報誌が仕入の判断材料となるというとちょっと微妙な気がする。出版社のお勧めじゃないんだ、読者の欲しがっている本がわからないことには判断ができないんだ。自分(本屋)が売りたい本とお客の欲しい本の交差するところに面白さも売上もある、のではないか。いや、あって欲しいと自分はそう思います。
※そういえば『本の現場』の幅さんの対談、もう一度考えてみると、幅さんは自分の売りたい本からお客が欲しがる本に徐々にシフトしつつあるのかも知れないな。