仕事と晩飯とその他

日記です。

この10年で出版は大きく変わった派

自分は「この10年で出版は大きく変わった派」だ。もちろん変わっていないこともたくさんある。だが、「本」という形のあるものを売るための「物流」と「商流」は確実に変わった。アマゾンという黒船によって変わった側面ももちろんあるが、重要なのはそこではなく、流通が変わったことで今まで変わらなかったことが大きく変わる可能性だ。

自分は今、具体的にそれをイメージしている。

●大きなネットワークの中で確認されるジャンルごとの定番商品の管理
誰もが共有できる「ロングセラー情報」を元に作られる「手間をかけずに安心して売れる棚」。本来の意味での常備寄託への回帰や自動発注のさらなる活用も期待される。同時に担当者の個性による「特徴のある棚」の明確も必要。担当者の個性なのか営業の押し付けなのかデータで選別なのか曖昧な棚ばかりが増えてしまった。「(店員が)遊ぶ棚」と「売る棚」の明確化とそのためのオペレーションは喫緊の課題だ。

●時流に合わせた短期勝負のベストセラー的商品の共同的な仕入
チェーンだけではなく、王子の新刊センターのように取次が主導する可能性もある。何らかの書店ブロックによる共同仕入についても下地は整ってきたと見ている。ただ、こうして考えてみるとバッファとしての取次支店の崩壊は悔やまれる。売れ筋の確保は永遠の課題だが、次で触れる「返品の高速化」「店舗間の在庫移動」も重要になる。

●返品の高速化と在庫情報の共有による店舗間の在庫移動
返品の高速化は「余った店」から「足りない店」への在庫の移動のために最重要課題だ。物流のさらなる高速化は書籍だけではなく雑誌の店舗間調整すら可能にする。移動経費を押さえるために店舗による在庫情報共有にも期待したい。神保町の取り組みや「本屋の村」の構想はまさしく。売れ筋だけでなく客注についても在庫移動のメリットは大きい。

「実売情報の共有」「在庫情報の共有」「物流(特に返品)のさらなる高速化」「店舗間移動の実現」「バッファとしての仮想在庫」「店員と一緒に遊ぶ棚作りを提案できる書店営業」

こうして整理してみると、なんと言うことはない、形も方法も違っても昔は皆やってたことばかりだ。

どうしてこんな当たり前のことができなくなってしまったのか。

なぜ、どの時期に丁寧な仕事の方法論が失われてしまったかについては思っていることがあるのだが、それはまた改めて。