悪夢、か
明け方、寝返りをうったら足がつった。激痛で当然目が覚める。ようやく落ち着いた。まだ早い、寝よう。
夢を見た。
大きな会合で手持ち無沙汰にしていたら知り合いの他社の営業から「誰々さんには会った?」と聞かれる。誰々さんって誰だっけ? と思う。常識のように皆知っている人のようだ。連れて行かれて会う。名刺を交換する段になって思い出す。「以前、●●の時にお会いしていますね」「ああ、そう言えば」。お互い記憶力に自信が無いことがわかって逆に気が楽になったようだ。思いもかけず突っ込んだところまで話が盛り上がる。そろそろ中締めの時間だ。帰りが遠いということで早めに切り上げるらしい。奥に座っていた車椅子の老人は先方の親御さんだった。その車椅子を押しながら駅に向かう。成り行きで持ちきれないほどの荷物を運ぶのを手伝う。改札の前は行列。そこで別れる。
どうしてだろう、オレが羽織っているコートは彼のものだ。何気なく突っ込んだポケットには大金の入った封筒が。慌てて駅に戻る。とっくに姿は無い。改札を抜けホームに走る。上野駅のように巨大な駅。いない。他のホームも探す。いない。
いや、あそこにいる。あそこは特急の始発ホーム。確かに車椅子を押した人影が電車の中に乗り込んでいく。
走る。もうすぐ、と思ったらゆっくりと電車がホームを離れる。遠くまで見渡せる。たまたま近くにいた駅員に訴えかける。
電車が停まった。ゆっくりと戻ってくる。
こんなことももあるんだ、と思いながら急いで電車に近付き、車内を探す。
いない。
ホームに並んでいる中にちらほらと知った顔。うんざりした顔で「誰のこと探してんの?」
誰のことを探してるんだ、オレは?
名前が出てこない。
ポケットの名刺入れからさっき交換した名刺を探す。見つからない。あった。いや、同じ会社というだけで本当にこれなのか。うんざりした顔の知り合いに聞いてみる。
「○○さんならそこにいるけど?」とアゴで示された先には探しているのとは違う顔。やはり名刺が違う。
再び車内を探す。いない。わざわざ電車を止めてくれた駅員が心配して近付いてくる。どうしようもない。間違いなくこの電車に乗った、と思った。
どうやら違ったようだ。
目が覚めた。