仕事と晩飯とその他

日記です。

魂の薀蓄

文法書、やはり通読はダルイので息抜きに昔買った『英語の感覚』(上下巻・岩波新書)というのを引っ張り出して読んだら、違う意味で、はまった。著者の先生は東大を出てから英語を教え翻訳とかもやっているそうなのだが、50歳になってから初めて留学したハーバード大で英会話ができないということに衝撃を受けたことがこの本を書くきっかけになったらしい。昔読んだ時は気がつかなかったのだが、今読むと「ひょっとしてトンデモ?」という不安をはらんだ危険な面白さを感じる。この先生は丸暗記をかなり強く否定しているのだが、留学経験等が乏しいにも関わらず英会話がペラペラと思える人の多くが「丸暗記」や「暗唱」「音読」を強く薦めていることとの対照が面白い。そしてこの本、先生の薀蓄と小理屈がとても多い。というより薀蓄と小理屈だけでできている本なのだが。その行間からは「オレは「英会話」はダメだったが英語はホントはできるんだ!」という先生の魂の叫びが聞こえてくる。そういえば狩野さん(東大中退)が英文法得意で、どうでもいいような重箱の隅の話をくどいぐらい説明してくれるんだけど、あれを思い出した。狩野さんは塾長としては事務系が苦手なのでちょっとあれだったが塾講師としては素晴らしかったなあ。ともかく、この本の薀蓄も小理屈もどちらかと言えば楽しく読めるのだが、「これでは決して「英会話」は上達しないのではないか」という気は、かなり強くしてくる。「先生、いちいちそんなこと考えてたら何も話せませんよ」みたいな。なんつうか英語の先生が生徒に教えるための小理屈と薀蓄を補充するのにはぴったりなのだが。この先生、その後、岩波アクティブ新書でも一冊「英会話」の本を上梓しているらしい。まったくの興味本位でしかないのだが、そちらも読んでみたくなっている。