仕事と晩飯とその他

日記です。

QRセンターから始めて流通の変化を思う。

出版QRセンターのメリットとして「返品を改装して再出荷するまでの期間短縮」を強調していたが、それは、新刊の配本に慎重なため宣伝と比べて市中での露出が若干偏りがちになり、かつ、書店からの注文が殺到し、かつ、返品活用(改装して再出荷)を前提とし、増刷に非常に慎重な、つまりは売れ筋の商品を頻繁に刊行する大手出版社にとってのメリットであると自分には思えた。ベストセラーとは無縁で、かつ、新刊の刷部数については品切にならない程度の在庫を確保する方針の弊社のような中小出版社にとってはあまりメリットとしては感じられない。

それよりもむしろ「確実に桶川に在庫を置いてもらうための手段」としてのメリットを感じた。「出版社は1000社でいい」というような発言も聞くが、物流の再編に乗り遅れずについていける社の数はそんなものかもしれない。桶川の在庫スペースを確実に確保できるか、自分にとっては今年の大きな課題となった。

「流通の再編に乗り遅れるな」と言っても、中小零細出版社にとっては大変な話だ。が、幸いなことに倉庫が対応し始めている。自社で取り組むことが難しくてもそうした倉庫を利用することで変化する物流への対応は可能だ。VAN接続や返品仕分け、無電化への対応などなど、倉庫は取次と出版社の緩衝装置としての機能に自覚的に取り組むことによって出版社の囲い込みを図ろうとしている。それもイヤだ、という出版社はどうしたら良いのかというと、アメリカのように「インプリント」という形態をとるという手もある。日本でも昔から行われている発行元と発売元をイメージすると分かりやすいが、もう少し近いものとしてレコード会社のレーベルのようなものとでも言おうか。とにかく、自前にこだわりすぎなければ方法論はいくらでもある。

変化する出版流通において「今、何が起こっているのか。これから何が起こるのか。出版社は何をすべきなのか。」を知ることが前提となる。ネットという文化によって本の内容についての変化というものも現われ始めているが、自分たちで意識的に取り組める「流通」についてなぜもっと取り組まないのかと、これは自分自身の反省も含めて常に感じている。物流の改善は歩調を合わせる必要のあることが多い。書誌情報しかり書店情報しかり。まずは知ること、そのための手段としてのシンポジウム開催が今春の(もしかしたら今年の)最大の課題だ。