仕事と晩飯とその他

日記です。

印税にはリスクが(ほとんど)無い

小規模な出版はアリだとは思う。決まりごとのようなことさえ解決すれば現状の物流に載せることは不可能ではない、が、現実的には今の流通に乗せるチャネルだけは既存の出版社の口座を借りたほうが面倒ではないと思う。

でも、年に何点か小遣い稼ぎ程度にということだと思いのほか儲からないんじゃないかなあ。
発送や回収のコストは昔に比べて安く実現できるが、コストと手間とリスクの問題は相変わらずだ。
お客さんとのやりとりも大変だ。出版ももはや昔のような殿様商売ではいられない状況で、お客さんの要求は日々エスカレートしている。届いた届かないで数回のやり取りが増えると手間とコストは増大する。輸送途中の破損でもあって交換など発生した場合、倍以上のコストが発生する。
売れているうちは在庫の心配をする必要は無いが、売れないものがひとつでもあると途端に場所が足りなくなる。在庫が増えると資金繰りは急に厳しくなる。叩き売りするという手はあるが第二市場の卸値は10%程度。原価以下だ。
宣伝も、余裕があるうちは「ぼちぼち売れてくれたら」のはずだが、資金繰りが苦しくなってくると即効性が欲しくなる。今さら新聞でもないだろうということでネットを考えてみるが、ネットでも効果が高い媒体は金額も高い。下手したら新聞よりも。

著者でいる限りは(取材費で赤字になる場合を除いて)赤字の心配は無い。が、規模の如何を問わず事業としての出版を始めると赤字になる可能性が必ず生まれる。
「自分の作りたいものを作りたい」と言って大手を飛び出した編集者が立ち上げた出版社を何社も見ているが、中には自分の作りたい本を作りたくて独立したはずなのに金儲けのための本しか作れなくなってしまったり、編集どころか金策で多くの時間が潰れてしまったり、資金繰りのために始めた請負仕事に追われていたのも束の間、それすらなくなりかけて仕事を確保するための営業に骨身を削る羽目に陥ったり、そんな例も決して少なくない。著者も同様。小遣い稼ぎのつもりで始めた仕事に追われたり、それでも書く仕事が確保できたらまだましで全然別のバイトを始めたりという例もある。
小さい規模の出版社は、多分、始める前に思っている以上に不自由なものであろうと思う。町のパン屋さんも楽しいことばかりではない。潰れて一家が離散することもある。事業である以上、リスクは必ずある。

印税にリスクは(ほとんど)ない。