仕事と晩飯とその他

日記です。

バクチではない。

本なんて簡単に作れて簡単に売れると思っている人の話を聞くと結構絶望的になる。

出版はバクチではない。本は簡単に作れないし、簡単には売れない。多くの人の手を経て形になり売られる以上、その過程に関わる人間にはそれぞれ責任がある。「間が少なければうまくいく」のが真実ならば、今頃取次というシステムは存在していない。だから、物事はそんなに単純ではないし、寄生虫とののしられようが流通や営業は必要不可欠だと信じている。

矛盾するようだが、出版はバクチでもある。一人で立ち上げたばかりの出版社がそれ自体がバクチだ。こだわった内容でうまくいくか倒れるか、失敗を恐れていては何も出来ない。逆に大手は失敗を許容できる余裕があるから失敗を恐れない。間の「堅実」なところはバクチは打たない。失敗しないからつまらない。

編集者で「好きな本を作りたいから」と言って大手から独立する人がいるが、社長になんかなったら本を作る以外のことをやらねばならんのだ。好き勝手な本を作りたいんだったら大手で口うるさい編集長かなんかやってたほうがよっぽど自由だろうに。

それでも出版をやりたいと思うんだったら、バクチではないシステムに無関心ではいられないはずだ。

金曜日のセミナーでもお金の話が多く出た。商売として成立する出版、それには、「好き勝手な本を作る」だけでなく「作った本はどんな本でも売り切る」ための方法論が必要だ。

などとエラソウに思っているので、断裁は本当なら屈辱のはずだが、税金のことを考えると「切れる(=損益計上できる)本がある(=それだけ利益が確保できている)」のはちょっと幸せだったりする。

この辺の気持ち、微妙だなあ。作りたい本だけ作るとか売りたい本だけ売るとかってのが正解だとは思うが、そうなるためにはもう少し時間やら準備やらが必要だな。