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最近の出版業界の話題で思う「信頼性と拡散」

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ここ最近取り上げられた出版業界の話題から思うキーワードは、書籍でも雑誌でも書誌情報でも、「信頼性」と「拡散」だ。

現状で「(紙媒体の)信頼性の高さ」は大きな強みだ。が、それがいつまで続くものなのか自分はやや懐疑的だ。理由はふたつある。

ひとつは「紙媒体、そんなに信頼できるか?」という点。メディア不信ということではなく「いい加減な仕事してるところあるよね」という現実への諦観を含んで。読者からの信頼性を自ら毀損するような仕事をしてはいけない。ここは出版社自らがしっかりと引き締めるところ。

もうひとつは、電子辞書の例。「電子辞書はダメだ」と言っていた年寄が実際に使い始めたら「拡大できるしバックライトで明るいしこりゃ便利だ。中身は○○だから問題ない」になった例。最近はデバイスとしての電子辞書からスマホやPCに移行している。「中身は○○」はまだ有効だが、紙媒体からの決別に対するある種の後ろめたさの言い訳でしかなければそのうち取っ払われることになるだろう。

拡散については「信頼性」が前提になる。信頼できない情報を拡散してもしょうがない(のだけれども、これだけ大量にどかすか作られる本のどれだけが本当に信頼に値する情報なのかという何とも言えない気持ちは常にある)し、信頼に値する情報であってもその存在を誰も知らなければどうしようもない。

雑誌媒体がWebを指向する中で「キュレーションサイト(なの?)」へと変化していくのは必然だろう。そもそも雑誌には「読者のコミュニティ」という性格もある。そういう意味ではWebの双方向性を生かしたいというのもある種の原点回帰か。

その際、やはり課題になるのは「信頼性」だろう。Webでの展開は雑誌としてのブランドだけでなく出版社そのもののブランドを大いに高める可能性がある(紙媒体では実は出版社はそれほど気にされていないのかもしれない)。が、傷つけてしまう危険性もある。そして、Web媒体の信頼性を高めれば高めるほど、相対的に紙との信頼性の差を小さくしていくということになる(紙媒体のアドバンテージを自らの手で小さくしていくということ)。

「長く売る」のは書籍そのもの拡散の方法としては有効だ。空間ではなく時間方向に拡大する。書籍販売の原点でもある。そのうえで、それでもやはり拡散は不十分だ。小零細の書籍出版社であればあるほど拡散は足りない。特に店頭において。そうなるとネットでの拡散に期待が高まる。図書館での蔵書というのも小零細にとっては拡散のための重要な手段になる。そして図書館と書誌情報は話題として相性がいい。が、流通のための情報とはどうしても性格の違いがある。そのあたり、足並みはまだ揃っていない。

「店頭での拡散」について思うところは別途。