苦い夢
苦い夢を見た。
大学生から質問を受けている。
「なぜ、(高校生は)医学部に行かないのか」という質問。
「そんなの、金がない成績が足りないの二点に決まってッだろうが」と答えるが、
「では、金と成績が足りたら全員が医学部をめざすのか」と重ねて聞かれる。
どうなんだろう。
ちょっと考える。
そうは言っても色々だ。やりたいこともあるだろうし、行きたいところもあるだろう。
などと考えは落ち着かず、ああだこうだ言いながらも答もうまくまとまらない。
自分のことを考える。金と成績が足りたとして、医学部に進んだろうか。
いや、そんな仮定に意味は無い。高校生の頃の俺にはそんな選択肢は無かった。
やりたいこと、行きたいところ。
では、なぜ、自分は大学を中退したのだろうか。
進路は自分ひとりで決めているようでそうでもない。環境に左右される部分は大きい。
途中で止めるのは簡単だ。驚くほど。
そして必ず後悔する。
ヒトは幾つもの人生を生きることはない。一度きりの人生だ。やり直しの効かないことは沢山ある。後悔してもどうにもならないことが積み重なっていく。
中途半端に目が覚めた。
この年になっても後悔していることと言えば大学中退だ。どうして卒業しなかったのか。卒業したところでしょぼくれた人生であることに変わりはない。別の後悔も生まれるのだろう。
『最後の誘惑』という映画で、十字架に架けられたキリストがとめどなく後悔する場面がある。物語はそのあと大きく展開して終わりを迎えるのだが、あの後悔を思い出す。キリストと同じだとかいう意味ではなく、生身の人間として生きるということは後悔を積み重ねるということであるという描き方。原作の『キリスト最後のこころみ』よりも映画のほうが一瞬に凝縮されていた気がする。
『The Cider House Rules』では、Dr.Larchが主人公に別の人生を用意する。主人公は本来なら有り得なかったはずの別の人生に於いてDr.Larchに教わった生き方を生きる。主人公の本来の人生に近いところにいた、本来の主人公の人生を生きたMelonyは最後になって……。
夢を見た後、そんなことを思い出した。
俺はこれから何ができるんだろうか。
苦い夢だった。