仕事と晩飯とその他

日記です。

ある本の感想

何年か前にWebの記事で見つけて気になって気になって気になって買ってしまった本のこと。しばらく品切になっていたそうだが久々に増刷するらしい。

自殺した若い女性編集者が綴った日記。とても悲しい本。

本になりたかった彼女は本になって満足してるとでも言うのだろうか。ちっぽけな本なんてものにヒト一人の人生を詰め込んでハイ終わりとか、やっぱりそんなのは違う。考えすぎかも知れないが、一読した段階で死のうと思った理由は分かった気がした。死を選ぶには、こんなことを言っちゃいけないかも知れないが、なんというか、つまらない理由だ。いや、本人にはつまらなくなかったとは思う。大ごとだ。でも、あのまま生きていたら、後になってみれば死ぬほどのことがあったのかどうかと思える程度の話ではある。死ぬほどのことなんてない。

本になんてならなくてもいい。本なんて全然大したもんじゃない。だいたい、彼女は本に救われなかったじゃないか。本も、本を巡る人々も、彼女を救うことはできなかった。いや、むしろ本も本を巡る人々も彼女を傷つけ続けただけだ。

amazonでは「現在、お取り扱いできません」と表示される。彼女の人生をちっぽけな本の形にして、しかもそれを「現在、お取り扱いできません」と表示させてしまう。そんな酷なことがあっていいのか。

また読もうかと本棚を探したが見つからなかった。床に積んだ本のどこかにあるはずだ。子供には読ませたくないな。うん、決して「いい本」ではない。まして重厚な書物などであるはずもない。高値で取引されているというがとてもじゃないが稀覯本とは言えない。

でも、なぜか、どうしても忘れられない本だ。

『八本脚の蝶』二階堂奥歯ポプラ社