55%というマージンについて
ウチの会社は某オンライン書店と契約が云々の話はまったくありません。関係者から直接話を聞いたわけでもないので、これから書くことはあくまでネットでの話題を見て小さな出版社の営業的な仕事をしている個人として思ったこと。
55%というマージンは「希望小売価格」に対してのものであり、実際の販売価格に対してではないとのこと。値引きについてどうなるのかよくわからないけど、電子書籍は「再販制の対象ではない」という判断は出版社・オンライン書店とも共有しているはずなので、そういう意味では将来的な値引きは充分にありうると考えていい、ですよね?
55%というマージンを聞いて「ああ、半額で売る時のことまで考えてるんだな」というのが最初の思い。半額で売って5%のマージン。ギリギリ、というかそれだときついけど、目玉にするならそれぐらいにしたいだろうなあ。
某オンライン書店は電子書籍の値付けということを念頭に置いているはず。
出版物は定価販売が原則で、多くの出版社はそれに慣れている。慣れているというより、直接製造原価も編集コストも定価販売を前提としてしか考えられなくなっている。だから、例えば弾力運用的なことについても対応が非常に難しいと判断する社も少なくない。
書店も同様に定価販売に慣れており、独自の価格設定が難しい場合があるようだ。昔の話で恐縮だが、Windows95が書店で発売された際の値付けには皆さんかなり苦労したという話を伺っている(古過ぎか……)。
話を戻すと、出版社は定価販売を前提に値付けを考えているが、某オンライン書店は多分そうではないということ。まあ、定価販売じゃない国での経験があるから定価販売を前提としてないことはうなづける。
そのうえで、書籍は多分、これから先も大きな値引きは不可能。なぜなら流通過程でのマージンが定価販売を前提に設定されているから。そこが変わらない限り値引きはあまり期待できない。
値引きのためには原資が必要だ。
55%というマージンはそれを見越したものだろう。55%丸儲けなどとは思っていないはず。実際には2割引いて35%、もしくは3割引いて25%程度を想定してるのだろうか。
数字で考えてみよう。紙で1,600円(本体)の本を電子でも同じ希望小売価格で販売したとして、実際に売るのは2割引で1,280円、3割引だと1,120円。
数字だけ見ると、どうもイマイチすっきりしない。
某オンライン書店は電子書籍をどれぐらいの値段で売りたいと考えているのだろうか?
1,600円の本を4割引だと960円、税込だと1,008円。
おお、なんとなくわかりやすくなってくる。
本体952円だと税込1,000円、本体950円だと税込998円。
このあたりっぽいかなあ。
日本の新刊書籍の平均価格は1600円ちょいだった(と思うが正確な数値は手元に無い)。
出版社が紙の本を超えない希望小売価格として最大の価格を付けた場合でも電子書籍を1,000円程度で売ってカツカツ利益が出せるか出せないか、それが「55%」というマージンではないかと自分は考えている。
ある意味、絶妙。というか、小売に価格コントロールの権利がない日本市場において最終的な販売価格の水準を保つために考え抜かれたパーセンテージなのではないか。
「電子書籍は安いはずだよね?」という市場の声に応えるには某オンライン書店としては55%というマージンは譲れないものなのかもしれない。
(でも文庫書き下ろしとか新書ってもっと安いんだよね。どうやって利益出してんだろう、皆)
などと自分は考えました。