仕事と晩飯とその他

日記です。

ひどい本読み終えた。

ひどい本のタイトルは『AS A MAN THINKETH PRESENT-DAY ENGLISH VERSION』(総合法令出版)。火曜日の午前中に読み終えた。やはりひどかった。

「成功するためには自ら環境を作り変える強い意志と信念が必要だ。そして強い意志と信念があれば環境は作り変えることができる」という主張に異議はない。ポジティブであることは自分自身だけでなく人間関係にもいい意味を持つし、強い意志を持って前進する人間はやはり強いと自分もそう思う。が、この本に全く賛成できないのは、環境や健康さらには美醜まで全て結果であると言い放ち、その必然として環境や健康・美醜の問題を抱える人間は間違った思考をしている悪い存在だと規定しているところにある。この本は「勝ち組」と「負け組」を定義している。その下敷きには宗教的な信念と徹底的な個人主義がある。自己責任が無限に肯定され、それが善と悪の二元論で結果付けられる。この本のポジティブな面が否定できないだけにやっかいなのだ。「悪い環境も自分で考え方を変えることで乗り越えられる」それはその通りだ。素晴らしい。しかし、「乗り越えられなかった奴は考え方が間違ってる。まして不平や不満を唱えることなど」とするその規定には断固反対だ。
ヒトには選べない環境というものがある。肉体的なハンデは時に非情なものだがそれを想像できないプアな発想の人間もいる。美醜を乗り越えるためにヒトは努力するが、それだけがヒトを判断する材料ではないことに気がつかなければ心の平穏は訪れない。

DALE CARNEGIE の“HOW TO STOP WORRYING AND START LIVING”は「奴隷になるための本」、“HOW TO WIN FRIENDS & INFLUENCE PEOPLE”は「詐欺師になるための本」、NAPOLEON HILL の“THINK AND GROW RICH”は「裏付けの無いポジティブ・シンキング銭ゲバ養成本」、JAMES ALLEN の“AS A MAN THINKETH”は「勝ち組と負け組みの定義」。

どれもクソみたいな本だと思うが、こうした思考が褒め称えられる世の中を生きていくためには必読なのかもしれない。スタインベックが立ち向かっていたのはこんなクソ本と同じような思考に凝り固まった悪辣な資本家たちなのだろう。そしてアメリカのアンダーグラウンドなカルチャーが笑い飛ばしていたのもこの本の読者たちだ。

※英語古典の現代英語訳(語注・対訳付き)はナイス企画。